1月3日のNYTのフリードマン氏のコラムですが、アイオワで行われた共和党の予備選挙のディベートを「みていて楽しい」と皮肉り、「もうひとつは政治家が21世紀の雇用創出からいかにかけ離れたところで議論しているか」と指摘していました。
So Much Fun. So Irrelevant. http://nyti.ms/x6H7n7
彼のポイントは、「アメリカは高度化し、雇用の創出のIT等の産業が牽引している。この知識経済をより拡大するには、優秀な人材を都市部に集積させイノベーションを促進させる必要がある。そのためには、地方や田舎に遅いインターネットを引くよりも、都市部に最高速のネット環境を提供する必要がある」という点です。
米の大統領予備選は、アイオワ→ニューハンプシャー→サウスキャロライナ→フロリダ等の流れで進んでいき、3月6日にスーパー・チューズデーと呼ばれる10州同時投票があり(詳細は→http://bit.ly/wVYjlQ)、そして4月24日にニューヨーク、6月5日にカリフォルニアの巨大州の投票が行われます。
アイオワやニューハンプシャーで予備選が行われるのが、小規模州のため各候補が地元密着の選挙を行うことが出来るためで、草の根民主主義を実践する良い機会なのです。しかしながら、問題点は以下の通りです。
- 人種多様性が反映されにくい:アイオワ、ニューハンプシャーともに白人が圧倒的に多い州で、マイノリティ比率は11.3%、7.7%と非常に低い(アメリカのマイノリティ比率は36.3% -11頁参照 http://1.usa.gov/ze6cPM)。白人中心の州(=保守的+信仰深い)の場合は重要な議題の移民や中絶問題については明らかにコンサバ候補のほうに有利になります。
- 都市部の意見が反映されにくい:2000年の都市部人口比率は米平均で79.0%でした。アイオワ61.1%、ニューハンプシャー59.3%で、両州ともに全米平均より都市化率が遅れた農業州です(http://1.usa.gov/wdH0p0参照)。よって、上記の都市への人口集積させ経済効率を高める議論よりも、農村部へのインフラ構築等が優先される方向にあります。予備選の次の州のサウスキャロライナも都市化率60%程度の州です。
- 都市圏の意見が反映されにくい:現在のアメリカ経済は「都市圏」が牽引しており、人口の84%、GDPの91%を占めます。そして市、郡、州という既存の枠を超えた都市圏単位でのプランニングが台頭してきています(http://bit.ly/vOirVb)。州内総生産における都市圏比率はアイオワで64%、ニューハンプシャーで71%で、これまた全米平均の91%より低いです(49頁&56頁参照 http://bit.ly/l8Wqmn)。
日本に大統領選があったとすると、予備選を鳥取→福井で行うようなイメージですかね。都市至上主義者のフリードマン氏の「もうひとつは政治家が21世紀の雇用創出からいかにかけ離れたところで議論しているか」という懸念もおわかりいただけると思います。
アメリカでも日本と同じように、巨大なニューヨーク都市圏を持つNY・NJ・CT州やLA・SFを抱えるCA州から、南部、中部や辺境の州への税収移転が行われています(州税に関する考察 http://bit.ly/V7itB)。僕も大統領予備選の仕組みを通して、アメリカの州制度の問題点や、都市圏を中心とした組み換えの必要性を実感しました。
日本も橋下市長の大阪市・府の改革が話題になっているので、道州制の導入を考えるにあたり、米の予備選や州制度はよい教材になるかと思います。
では、Happy Investing!!!!