このところ、2011年の日本の貿易収支が通年で赤字になったり、アップル社がなぜ中国での製造にこだわるかの記事が話題をよんだり、オバマ大統領が一般教書演説で製造業雇用を増やすと宣言したり、で製造業の話が盛り上がっているので、過去のツイートをまとめておきます。
結論から言うと、ドル安、新興国の賃金アップ、原油高による輸送費上昇等により、米への製造業回帰は進むと思います。しかしながら、賃金は新興国び引っ張られて下がっているという手放しでは喜べない状況です。
まず、アメリカの製造業の立ち位置から。1950年頃には世界の工場と呼ばれたアメリカの製造業ですが、それからズルズルと地位を下げているのが明確ですね。
- 1970年→2009年製造業の国別雇用比率推移:米26%→10%で、大きく雇用を減らしています。先進国はどの国も製造業雇用が激減しているのですが、減少幅が大きいのが英34%→11%、豪24%→9.3%、比較的頑張ってるのが独40%→22%、日27%→17%ですね。

- 米製造業雇用は2001年→2011年で 28%減の1214万人。米の産業で最大の下落率。牽引しているのはオイル、ガス、鉱業などのエネルギー関連やや教育やヘルスケア産業。
- 雇用数がピークに戻るのが2020年以降の都市圏と雇用損出数(頁7)http://bit.ly/l8Wqmn クリーブランド-8.4万職、デイトン-3.5万職、デトロイト-24万職、トレド-4.1万職、ヤングスタウン-2.3万職。
- デトロイト都市圏人口は430万人で1970年から横ばい http://t.co/C1N2lhSZ デトロイト市の人口は1950年の185万人から2010年には71万人まで減少。白人富裕+中間層が郊外に移り住み、黒人比率は82% http://t.co/1ttR38ar
- NY州バッファロー/シラキュースの製造業衰退レポート。共に製鉄と鉄を使った大型機器が一大産業でした。組合が強いから新たな製造業が入ってこないという問題もhttp://t.co/2yXqOdG http://t.co/jvh619v
- ラストベルト(中西部)の製造業雇用の伸びは堅調 http://wapo.st/jalG6N 今年に入ってから米の製造業雇用は25万人増加(不況後の人員削減の13%)。しかし、OH州の単純作業給与は時給$7~9程度。恐ろしい現実。
- 米国を待ち受ける「時給14ドル」の日常 日経 米州総局・小高航 http://s.nikkei.com/qTVozk かつては全米自動車労働組合の工場労働者を中心とする組合員の賃金は基本給だけで時給30ドル、福利厚生も含めると時給50ドル強。年収では約10万ドル(770万円)に達していた。しかし「ティア2」(第2階級)と呼ばれる組合員が急増している。同じ仕事をしながらも既存従業員とは異なる賃金体系を適用される。時給はわずか14ドル。1日8時間、週5日働き続けても、年収は約2万7000ドル。
- BCGの「製造業のアメリカ回帰」のレポートhttp://t.co/5Kex3b4U 00年の段階ではパート当たりの労働コスト(運輸費、関税等含む)は米$2.11、中$0.74で中国は圧倒的なコスト競争力があったが、15年には$3.31、$2.00と大幅に縮小
- 多国籍企業:米国に回帰する製造業 エコノミスト誌http://t.co/aDdVbAZ 理由:1)年間17%と予測される中国の給与増加、2)ドル安、3)輸入費増加(=ガス高)、4)サプライチェーンの複雑化、5)リードタイム短縮、6)総コストにおける人件費の低下
- 「アメリカに製造業が戻ってくる」 2011年9月HBR記事 http://bit.ly/y2StyG 米製造業は24ヶ月連続で生産拡大中。賃上げが進み中国の労働コストの価格競争力は、生産性を換算すると米より30%程度しかなくなった。GA、LA、MS、TXといった製造業労働コストの低い州では2015年には中国と同等の製造効率を達成できる。
- 原油高とアメリカ・中国の輸出入の関係について http://bit.ly/j7LSjl 原油価格上昇で、大きく移動にコストがかかる製品に関しては、米に製造が戻る傾向。
アメリカの製造業が若干盛り返している背景には、中国製造業が給与アップや、労働者への待遇改善で勢いが止まりつつあるという背景があります。
- 中国政府が付加価値の高いテクノロジーの国内内製化に躍起になってる、というハーバードBR記事 http://bit.ly/wXczlt iphoneの「組み立て」で一台あたり$6.5しか儲からない図式を見ると、中国政府の焦りもよくわかる。単純労働者の賃上げ圧力は強いしね。
- 中国の製造業:安い製品の終わり? エコノミスト誌 http://bit.ly/mit84K コモディティ価格高騰と賃金アップで労働集約型製品については年間5%の値上がりも。中国沿岸部は急速に電子機器などのより高度な製品の生産に移行している。
- 高騰続く中国の人件費、生産移転のリスクは?FT http://bit.ly/f50CUD 労働者の月収は$400、ベトナムの5倍。しかし1)生産性も給与と同等に上昇、2)複雑な工業製品の人件費比率は2~3%、の理由で複雑な製品の工場移転はおこらない。問題は労働集約型製造業
- 中国の労働者賃金上昇と製造業の今後WSJ http://on.wsj.com/lbtr0H Foxconnショックから農工労働者の賃金上昇が顕著。大手アウトソース会社はコンゴ5年間で80%の賃上げ予測。15-34歳労働人口は07年から減少。内陸と低賃金国に工場移転加速。
- 中国に巨大“自殺”工場の余波:日経ビジネスオンラインhttp://t.co/uz0xq6oO この前つぶやいた通り中国は労働者給与是正が急速に進む模様 http://t.co/fDuVg6RV 輸出競争力の下落に直結。
- 中国「新世代・出稼ぎ農民」に悲哀はない- 世界の工場がみるみる「求人難」になった背景 http://bit.ly/e1VN5J 農工民は、沿岸部より給与が下がっても内陸の地元でパラサイト指向。労働集約型の製造はより安い国へ。
- 過熱する中国労働者争奪戦の舞台裏 http://bit.ly/icksXq 沿岸地域の労働者不足で内陸に進出した武漢フォックスコンが月給2800元($420)を提示。沿岸地域の労働争議前の給与の倍近い。中等収入のトラップは間近?http://bit.ly/909I8I