ヨーロッパへの出張ついでに週末をシチリアのパレルモで過ごしてきました。話には聞いていたけど、「カオス」ですね(笑。ナポリと比べても街のゴミの多さや、車やベスパのオラオラ度は、凄いかなと思いました。やはりイタリア北部の州と比べると、明らかに貧しいですね。
シシリア自体、北海道・沖縄開発庁的な役所にサポートされており、かなりの財政的支援をイタリア政府から受けています。それが移転所得としてシシリアに落ちてるんでしょうね。その資金の大部分がマフィアが暗躍する公共投資・インフラ整備につぎ込まれます。数週間前のブルームバーグ記事ですが、着工したプロジエクトの完成率も低く、財政破綻寸前だそうです。
シチリアが「イタリアのギリシャ」にも-無駄遣いで周囲道連れ http://bit.ly/PmKDzF
さて、本題ですが、Eurostatの2009年発表データを使い、ヨーロッパ都市圏別の経済格差を分析して見ようとおもいます。
まず、下記は、EU27カ国の上位・下位20都市圏の一人あたりGDPインデックスです(27カ国平均=100)。トップ1、2はは金融の強い、ロンドン(332)とルクセンブルク(266)都市圏、3位はEUの政治的首都で高級官僚が多く住むのブリュッセルです。その他、ドイツ一の港町ハンブルグ、自動車生産のメッカ・ブラスティラバ、パリ都市圏、プラハ、ストックホルム等では。下位はブルガリアやルーマには、ポーランド、ハンガリー等の旧東欧の地方都市圏でロンドンと比較すると10倍以上の格差です。
次に、イタリア国内の経済格差をチェックしてみましょう。一番右の数値は購買価格調整後のインデックスで、右から2番目の数字は購買価格調整後の一人あたりGDPです。イタリア北西部(Nord Overst)や北東部(Nord Est)の一人あたりGDPインデックスは125ですが、南部(Sud)は69.7、シシリアは68.1で倍近い格差があります。こちらの数字からも、イタリアの南北問題を痛切に感じますね。
国内の経済格差はイタリアだけでなく、いわゆる先進国でも存在しています。
- ドイツ:ハンブルグ183・北ブランデンブルグ76
- スペイン:マドリッド135・アンダルシア80
- フランス:パリ175・Limousin83
- イギリス:セントラルロンドン327・ダーラム78
旧東欧諸国ではその格差はもっと壮絶です。逆の見方をすると、旧東欧の主要都市圏はEU平均以上の一人あたりGDPを達成しており、先進国の農村地域よりも経済的には豊かといえます。
- スロヴァキア:ブラスティラバ169・V?chodn? Slovensko 49
- ルーマニア:ブカレスト106・Macroregiunea Doi 31
- チェコ:プラハ174・Moravskoslezsko 68
下記はOECDの主要国の都市部と農村部の2005年一人あたりGDP比較です。ハンガリーやチェコなので「新興国」では格差が大きく、イタリアや日本などで格差が小さいです。
さて、2012年10月22日の日経の記事で、「欧州で静かな独立運動」という記事がありました。これは、スコットランド、カタルーニャ、バスク、フランドル地方で、それぞれ英国、スペイン、ベルギーからの独立運動が盛り上がっているという記事です。背景としては、1)EUの求心力が増加し国家への帰属が薄まった、2)これらの地方は比較的豊かで、3)多くの国で財政状況が逼迫するなかで、貧しい地方に足を引っ張られていると感じているからです。ちなみにこれらの地方の一人あたりGDPインデックスはスコットランド108、カタルーニャ121、バスク130、フランダース116とEU平均よりも高いです。
つらつら書き込んで来ましたが、いくつか重要な点があると思います。
- 経済的な分析において「国」という単位よりも「都市圏」の位置づけが世界的に重要になってきている。
- 先進国は都市部から農村部への所得移転を進めることが出来て国内の格差が比較的小さいが、新興国の格差は巨大。
- 金の切れ目が縁の切れ目ではないですが、先進国の多くが緊縮財政に入ると、比較的裕福な地域の貧しい地域の切り捨ての動きが増加する。
不動産投資においても、「都市圏」の分析の重要性がご理解いただけると思います。
では、Happy Investing!!!
P.S. 下記の書き込みも参照ください:
- ロンドンはいかに世界都市になったか? http://bit.ly/vEaPPQ
- 高頭脳なアメリカ都市圏ランキング http://bit.ly/JBiTx9
- 「米の新たな地域別雇用事情」 http://t.co/FiF5PMtb 製造のアウトソース進展で、ITや金融などの高技能労働者の雇用を増大→SV、ボストン、オースティン等の高学歴都市は隆盛だが、低学歴都市は地盤沈下。米国外で稼ぐ高技能雇用が一人増えると、低技能職が5人増加。